弁護士ものの海外ドラマが好きです。判決をめぐっての知的でスリリングな攻防、そして、裁判を通じて、「正義」とは何か?を考えさせてくれるのが、刺激になって脳が活性化される気が勝手にしています。
特に、シリーズものでありつつ事件が1話で完結でサクッと観られるタイプの法廷ドラマが好きです。
今回は、そんな法廷・リーガルものの海外ドラマの中で、個人的に大好きな作品5タイトルをご紹介します。
「グッド・ワイフ」(hulu、wowowオンデマンド)
まず1作目で紹介するのは「グッド・ワイフ」。日本では少し前に常盤貴子さん主演でTBSでリメイクされたことでも有名ですね。
主婦として家庭を守ってきたアリシアが、州検事の夫がセックス・スキャンダル絡みの収賄罪で逮捕されたのをきっかけに、2人の子供たちとの生活を守るため13年ぶりに弁護士として復帰する、というストーリー。2009年スタート 全7シーズン
ということで、妻であり母である主人公アリシアが、弁護士として社会で奮闘するところに感情移入しそうなドラマですが、私自身は正直、アリシアにはそこまで感情移入しませんでした。(アリシアが肉食系というか強そうなのも理由かもしれません)。
「グッド・ワイフ」で、私がおもしろい!と思った一つ目の理由は、各回の縦軸になる裁判が、アメリカの社会問題をビビットに反映している訴訟なところです。
2009年スタートのドラマですが、今見直してみても「インターネット企業のプライバシー保護」や「仮想通貨」など、当時の社会問題をいち早く取り入れた脚本がすごくエッジが効いていて、1話完結のエピソードの中で、「現代社会における正義とは?」を考えさせてくれます。
もちろん答えが出ない問いが多いですが、ドラマサイドの答えの出さなさ加減も絶妙です。
もう一つ、個人的な「グッド・ワイフ」の推しポイントをお伝えすると、アリシアを取り巻く周りの登場人物がとても魅力的なところです。レギュラーで登場するメインの登場人物はもちろんですが、このドラマは、準レギュラー的なキャラクターがめちゃくちゃ変わり者ぞろいで魅力的なんです!
特に好きなのがこの3人。左から、殺人鬼?(謎)の変態富豪 コリン・スウィーニー(ディラン・ベイカー)、奇人だけど頼りになる弁護士エルズベス・タシオニ(キャリー・プレストン)、そして自らの病気すら利用するしたたかで憎ったらしいライバル弁護士ルイス・ケニング(マイケル・J・フォックス)。時々しか出てきませんが、クセ強すぎて、そのクセがクセになって、登場するとにんまりしてしまいます。ぜひ個性豊かな登場人物含めて楽しんでいただければと思います。
「SUITS(スーツ)」(Netflix)
続いて紹介する作品は「SUITS」。こちらも織田裕二さん中島裕翔さん主演で日本でリメイクされているのでおなじみですね。
ニューヨークの大手法律事務所を舞台に、「クローザー」敏腕弁護士ハーヴィーと天才的な頭脳を持つ若者マイクがタッグを組んで様々な訴訟に挑む。ただ、ハーヴィーが自身のアソシエイトに採用したマイクは、弁護士資格を持っていなくて…
2011年スタート 全9シーズン
SUITSの魅力は、なんといってもおしゃれでかっこいい!です。美男美女ぞろいでファッションも音楽もおしゃれ、目と耳が喜びます。中でも、主人公ハーヴィー・スペクター(ガブリエル・マクト)のスーツ姿と立ち振る舞いのかっこよさ、ちょっと嫌味なほど絵になります。
そして、ハーヴィーとマイクのバディぶりがやっぱり最高ですね。上司のハーヴィーに対してちょっと小生意気で近い距離感で接するマイク、そしていつもは個人主義なのに、マイクのことは大事なときには徹底的に守る優しさを見せるハーヴィー。2人が映画からの引用をする会話も楽しいです。
個人的にはシーズン1の、毎回さまざまな訴訟をハーヴィーとマイクのコンビがかっこよく解決する、というストーリーが爽快感あって好きだったのですが、シーズン2以降は、やや事務所内外の内輪もめのストーリーがベースになって重めな展開になったのはちょっと残念でした。
「BULL(ブル) 法廷を操る男」
続いてご紹介するのはBULL(ブル)。wowowで放送されシーズン6で完結しています。
風変わりな心理学者ジェイソン・ブルが、依頼人のために法廷での審理を有利に導くコンサルタント会社「TAC」を設立。ブルは個性的な仲間と共に、裁判科学の専門知識を駆使して陪審員を味方にし、無実ながら被告となった依頼人たちを助けていく。
206年スタート 全6シーズン
BULLが斬新なのは、主人公のブルが弁護士でも検察官でも裁判官でもなく、心理学者で「裁判科学」の専門家であること。いわゆる、訴訟の「コンサル会社」の社長なんです。
アメリカの裁判と言えば、陪審員裁判。BULLが経営するコンサル会社TACの強みは、「陪審員」の分析です。訴訟の内容によって、心理学の観点からどんな性格・属性の陪審員を選べば裁判が有利になるか助言するとともに、陪審員全員のデータを入手して、陪審員に属性が似た模擬陪審員を集めて自社内で模擬裁判を行う徹底ぶり。模擬裁判での模擬陪審員一人一人の反応を見て、実際の訴訟への戦略を立てます。野球に科学とデータを持ち込んだ映画「マネーボール」の裁判版といった感じでしょうか。
また、ほぼ毎話、きれいな一話完結型のストーリー展開なのでとても見やすいです。展開が少し予定調和で甘めなところもありますが、ブルたちTACのメンバーが、根っこのところで「善きこと」を志向しているので、安心して楽しめて読後感がよいのも魅力ですね。
日本での配信状況ですが、残念ながら2024年5月現在、配信されていません。シリーズを放送していたwowowさんのwowowオンデマンドで配信してくれるといいのですが。
「ある告発の解剖」(Netflix)
ここまで3作品はシリーズものの法廷ドラマを紹介しましたが、続いて紹介するのはリミテッドシリーズの「ある告発の解剖」。Netflixで配信中です。
大物政治家の妻として恵まれた生活を送っていたソフィー。だが、数々の秘密が暴露され、夫ジェームズにある容疑がかけられたことで、奈落の底に突き落とされる。(2022年 全6話)
ここまで紹介した「グッド・ワイフ」や「SUITS」に比べると知名度は圧倒的に低いかもしれませんがスリリングおもしろかったです!
舞台はイギリス。エリート政治家のジェームズ(ルパート・フレンド)が、若い助手と浮気していたことを妻のソフィー(シエナ・ミラー)に告白するところから物語は始まります。離婚危機のストーリーかと思いきや一転、ジェームズが「ある容疑」をかけられ告発されてしまいます。
この「ある容疑」のことも書いた方がこのドラマの魅力がより伝わるかと思いつつ、知らずに見た方がおもしろい、という方もいらっしゃるかと思うのでここでの言及は避けますが、その告発から、物語は法廷でのスリリングな攻防に突入します。
浮気したエリート政治家ジェームズ役は、「ホームランド(HOMELAND)」で大好きだったクインを演じたルパート・フレンド。大好きだったクインをひきずって、ジェームズが、浮気したクズ夫なのか?いやでもやっぱりクインの人だから実はハメられているだけでは?と信じたい気持ちが勝手に行ったり来たりしました。(ホームランド効果)
後から知ったんですが、「アリー my love」「ボストン・リーガル」などリーガルドラマの名手、デビット・E・ケリーが脚本と製作総指揮をつとめていました。法廷劇は安心・安全のスリリングさとおもしろさです。
「グッド・ファイト」(U-NEXT)
ドラマ「グッド・ファイト」を一言でほめると、この制作陣は「狂ってます」(ほめ言葉)。その「狂気」がドラマを最高潮におもしろくしています。
この記事で最初に紹介した「グッド・ワイフ」のスピンオフとして制作された「グッド・ファイト」。その創作の根源は「反トランプ大統領」。
なんといっても、主人公のダイアン・ロックハート(クリスティーン・バランスキー)がドラマ内で猛烈な反トランプなんです。
ダイアンの反トランプの執念が、ドラマ内でコミカルに描かれますが、次第にどんどんエスカレートして「狂気性」を帯びていきます。トランプ政権の中、現政権批判をエンターテイメントに昇華してここまで思いっきり繰り広げるドラマ、ぶっとんでいます。(エンタメを超えてガチすぎる気もしますが,,,)日本のドラマで、主人公が現役の総理大臣を降ろそうと企むドラマってちょっと考えられませんよね。
シーズン2の各回のサブタイトルが「408日目」「415日目」「422日目」…と、トランプ政権の日数を数えているのも、なんというか、制作陣の反トランプの執念を感じます
そして、「グッド・ワイフ」同様、現代アメリカのさまざまな事件や社会問題をモチーフにした訴訟が繰り広げられ「アメリカの今」を知ることができるのも魅力です。ただ、訴訟の内容も、トランプ政権下を反映してか、よりエグみのある尖った内容になっていて、シニカルさやブラックユーモアが先鋭化を極めて、物語全体の世界観が「悪夢的」とすら感じます。この「悪夢感」は好みが別れるところかもしれません。
「グッド・ファイト」はアメリカでは全6シーズンで完結しています。日本ではU-NEXTでシーズン5まで配信中。シーズン6の日本での配信が待ち遠しいです。