シーズン3もいよいよ残り3話。タイトルが「インターナショナル・ブレイク」だったので、ラスト2話へ向けて、小休憩の回になるのかなと思ったら、レベッカに思いっきりガツンとやられました!
今回のテーマは、「初心(童心)を取り戻す」でしたね。とにかくレベッカが最高すぎた回でした。
テッド・ラッソの世界でもスーパーリーグ構想が
オーナーのレベッカは、元夫でライバルチームのオーナー・ルパートから「アクフーリーグ」という、いわゆるスーパーリーグ創設へ向けた会合への誘いを受けます。構想者は、ナイジェリアの超富豪のアクフー。
世界の強豪チームだけで新しいリーグを作る、というスーパーリーグ構想は、実際のサッカー界でもあって、ヨーロッパの強豪チーム12チームで作る「欧州スーパーリーグ」構想は少し前にかなり本格化しそうになったのですが結局頓挫しました。
しかし2023年12月、再びスーパーリーグ新構想が立ち上がり、このエピソードが、よりタイムリーな状況になっています。
アクフーリーグに対してそもそも否定的で、元夫とのルパートへの関係もあり出席すべきか悩んでいたレベッカですが、出席を決意します。
大切なものに気づかせるレベッカの名スピーチ
会合に出席したプレミアリーグのオーナーは、レベッカを除いてみな高齢の男性ばかり。「アクフーリーグは儲かる」というアクフーのプレゼンに、ルパートはじめ各クラブの高齢男性オーナーたちはおいしいビジネスになりそうだと、リーグ創設に傾きますが、そんな中で放ったレベッカのスピーチが、もう最高かつ痛快でした。
レベッカのスピーチのヒントになったのは、「老人たちも昔はただの少年」というキーリーからのメール。
高齢男性オーナーたちを前に、まるで悪さをした子供たちを叱るように、一喝するレベッカ。
何をしてるの!やめなさい!本当にこれ以上のお金が必要なの?
人が宝物にしてるものをなぜ取り上げようとするの?遊びじゃないの。
サッカーは、ただの競技じゃない。
誰もが夢中になれるものなのよ。
最悪の気分にされたり、次の瞬間にはクリスマス気分になれる。
サッカーは普通の人を英雄にしたり悪役にもできる。
サッカーは人に愛されている。
私の父もサッカーを愛した。
あなたたちも愛してたでしょ。絶対そうよ。
(リッチモンドのオーナーだったルパートを見ながら)
リッチモンドの労働者階級出身のある少年がいた。
彼はサッカーに夢中でスタジアムに忍び込んでた。
チケットを買うお金がなかったからよ。
でもある日、ついにつかまった。そして警備員に顔を殴られ地面に倒された。
でも少年は立ち上がり、にっこり笑って、警備員のタマを蹴って逃げた。
戻ったのは、それから25年経って、そのクラブをまるごと買収したときだった。
彼はオーナーになった初日に、昔の警備員を探し出して何の説明もせずに給料を上げた。
オーナーだからってチームは所有物じゃない。
私は、わずかであってもこの美しいサッカーを壊す危険性があるものには参加しない。小さな子どもや大人から取り上げたくないわ。彼らの心の中の美しい情熱を引き出せるものを。
次のシーン、キレて会合の部屋を出るアクフー、体中料理まみれになったオーナーたち。料理まみれになったルパートとレベッカが子どものように笑い合う、という演出が見事でした。
レベッカのスピーチで、ほかのオーナーたちも初心に帰り、アクフーリーグに参加することをやめ、キレたアクフーに料理をぶちまけられたのでした。そして、これまでずっと典型的な悪役だったルパートですら、ついに「実はいいやつ」にしてしまうドラマ「テッド・ラッソ」の包容力もすごいなと。
このシーズンは、レベッカ役のハンナ・ワディンガムの演技がずっとすばらしいですが、この10話は圧巻の一言でした。凛々しさと繊細さ、そしてコミカルさを共存させる演技で、どんどんレベッカを好きになりますね。
会合の前のシーン、自宅の鏡の前で、鏡の中に少女時代の自分を見ながら、会合へ向けて気持ちを鼓舞するシーンもほんとうにすばらしかったです。
シーズン3もいよいよ残すところあと2話。見終えてしまうのがさみしくなります。