AppleTV+で配信中の海外ドラマ「テッド・ラッソ」。素人のアメフトコーチだったテッド・ラッソが、イギリスのプレミアリーグの監督になって…というヒューマンコメディです。
最終シーズンのシーズン3は、とにかく心に響く名言・名セリフがとても多かったです。サッカーが舞台のドラマですが、サッカーに限らず、生きていく上で「より善く」生きるヒントを与えてくれる言葉の数々。その言葉たちをまとめてみました。
名言1 テッド 下水道での課外授業 ~ep1より
第1話、シーズン開幕前に、チームが軒並み最下位予想され、練習に気が入らない選手たちを見て、テッドは課外授業と題して選手たちを連れてマンホールを降りてなんと下水道へ。
ロンドンの下水道網の役割と重ねながら、チームに必要なことを説きます。
自分たちは地上でもクソ(他人の批評)に取り囲まれている。だから自分たちで心の中に下水道を作る必要がある。仲間と管を連結させて、助けあい、流れを作る。チームのつながりを保ち、必要のないものをすべて流し去ることが大事だ。
チームワークの大切さと他人の批評に影響されないことを説く言葉。「下水道」に例える発想がすごくいいなと感じました。悪意ある他人の批評を「クソ」になぞらえるダイレクトな辛辣さも効いてますね。
実際の生活でも、嫌なこと言われたり、不快な気分になったときに、自分の中に「下水道」をイメージして流し去ると、うまく忘れられそうな気がしました。
名言2 テッド “BELIEVE” ~ep5より
第5話、大エース ザヴァの突然の退団で不安がる選手たちに向けた、ロッカールームでのテッドのスピーチ。
「勝利をつかもう。今ここにいるメンバーで。今、君たちに必要なのは、信じること」
(同時にチームの標語の”BELIEVE”の張り紙が落ちる。不吉だと不安になる選手たち)
「結局は、ただの標語さ。」(BELIEVEの張り紙を破るテッド)
「紙を貼ったって、信じる気持ちは湧いてこない。
心で感じないと。それに、頭や腹で。
体の中にため込んだ汚物に邪魔をさせるな。全部汚物だ、嫉妬や、恐怖、羞恥心。もう汚物なんかに振り回されるのはやめよう。」
「どうせだったら、何かを達成できなくても、自分は大切だと思いたい。
人に愛される価値があると思いたい。たとえ傷つけ、傷つけられたとしても。
どうせ考え込むなら、希望を信じていたい。状況はよくなる。
俺たちは強くなる。そう信じていたい。
あとは、自分を信じて、互いを信じあうこと。それは、生きる上で不可欠だ。
一人一人がそれを信じるなら、その信念は破られない。また月曜に。」
「どうせだったら、何かを達成できなくても、自分は大切だと思いたい。」、結果を求められるスポーツの世界で、まずは自分を大切にすることを説くテッド。物語全体を通して、テッドのチームへの取り組み方がわかる名スピーチでした。
名言3 コリン・ヒューズが望む世界 ~ep6より
第6話、アムステルダムでの一夜。
ゲイであることをチームに隠しているコリン・ヒューズとトレント・クリムの語らい。コリンのことを気にかけ、相談に乗るトレント・クリムに、コリンが言った言葉です。
「望むのは、試合に勝ったとき、みんなが彼女にするように、自分の大事な人にキスできる世界」
シーズン3を通して描かれてきたコリンの葛藤。自然に寄り添うトレント・クリムのやさしさもすてきでした。
最終話のラスト、コリンがこの言葉の通り、自分が望んだ世界を実現した場面は心が温かくなりました。
名言4 キーリーの核心を突く一言 ~ep8
8話、過去に恋人に送ったヌード動画がネットで流出してしまい、世間からも恋人からも批判されピンチに陥るキーリー。
レベッカに慰められ、「私にできることある?」と聞かれたキーリーが、冗談交じりに言った一言が、核心を突いていました。
「女性をいやらしい目で見てるくせに、いやらしい姿を見せる女性には厳しい社会を叩き直してくれないかな」
こういう何気ないところで、皮肉が効いた核心を突く言葉が出るとハッとしますね。
名言5 激おこレベッカのロイへのダメ出し ~ep9
第9話で、テッドの代役として、試合前の会見を頼まれて承諾していたロイですが、無断で欠席。それに激怒したレベッカの、ロイに対して言い放った例えが秀逸でした。
「それがあなたの人生なの?つまらないことや難しいことから、ただ逃げ続けるのが?望みは何なのよロイ。もっと多くを望んでいるはずよ。
自分にはステキな人生はふさわしくないって思いこんで、まずいスープを飲んでおいて、『足りない』って嘆いているわけ。
いい加減ビシッとしなさいよ。あなたの『俺ってかわいそう』って態度を見てると、すっごくイライラしてくる」
このレベッカのダメ出しを受けて、ラストでロイが自ら会見に出席して、サポーターと乱闘したアイザックを守る発言の流れが完璧でしたね。
名言6 ロイ・ケントの選手を守る会見 ~ep9
その第9話でのロイの試合後の会見。
記者から、暴言を浴びせたファンと乱闘を起こし退場になったアイザックについて、クラブとして許容するかと聞かれてたときのロイの言葉。
自身のある経験も交えて話した言葉が、サッカーファンとしても、ほかのあらゆるジャンルのファンになったときにも、肝に銘じておきたいものでした。
「世の中には、チケットを買えば、選手にどんなひどいことを言っても許されると思っている奴もいるが、サッカー選手だって人間なんだよ。
そして誰にも、他人の人生のことはわからない。
アイザックが今日やらかしたことは許されない。でも俺は支える。
なんであんなことをしたのかは、俺には関係のないことだ。」
アイザックの起こした行動は許されない、としつつアイザックを支えることを明言するロイ。
ロイ・ケントにしかできない、漢気あふれる見事な会見でした。
何かを応援していると、つい応援している人から失望させられるような言動があったりすると、勝手にいろいろ想像して批判しがちになってしまうのですが、その人が「なぜそんな言動をしたのか?」は、その人しかわからないんですよね。
もしかしたらその陰で、ものすごく辛いことがあったのかもしれない、そうせざるを得なかった背景があるのかもしれない、そういう視点を大事にしたいと思いました。
名言7 テッド カミングアウトしたコリンへの言葉 ~ep9
第9話、ハーフタイムのロッカールームで、コリンが、ゲイなのは自分だとカミングアウトしたときのテッドの言葉。
チームメイトたちが、コリンをフォローしようと「ゲイでも気にしないよ」と口にする中、テッドは「気にするよ」と言います。
「みんな(コリンのことを)気にするよ。気にかけてる。コリンのことも、これから経験することも。でもこれからは、君一人で抱え込まなくていいっていうこと。」
アメフトファンの友だちとの、ちょっとわかりにくい経験談を交えながら、コリンがゲイであることを「気にしない」ではなく、ゲイをカミングアウトすることで、これからコリンが経験するかもしれない苦難も含めて、「気にかけて、チームのみんなでサポートする」ことを伝えるテッド。テッドの優しさと包容力が詰まった言葉でした。
名言8 レベッカ オーナーたちを一喝するスピーチ ~ep10
第10話、「アクフーリーグ」という、いわゆるスーパーリーグ創設に向けた会合に出席したプレミアリーグのオーナーたち。「アクフーリーグは儲かりそうだ」と各クラブの高齢男性オーナーたちはリーグ創設に傾く中で放ったレベッカのスピーチ。
高齢男性オーナーたちを前に、まるで悪さをした子供たちを叱るように一喝するレベッカが、最高かつ痛快でした。
何をしてるの!やめなさい!本当にこれ以上のお金が必要なの?
人が宝物にしてるものをなぜ取り上げようとするの?遊びじゃないの。
サッカーは、ただの競技じゃない。
誰もが夢中になれるものなのよ。
最悪の気分にされたり、次の瞬間にはクリスマス気分になれる。
サッカーは普通の人を英雄にしたり悪役にもできる。
サッカーは人に愛されている。
私の父もサッカーを愛した。
あなたたちも愛してたでしょ。絶対そうよ。
(リッチモンドのオーナーだったルパートを見ながら)
リッチモンドの労働者階級出身のある少年がいた。
彼はサッカーに夢中でスタジアムに忍び込んでた。
チケットを買うお金がなかったからよ。
でもある日、ついにつかまった。そして警備員に顔を殴られ地面に倒された。
でも少年は立ち上がり、にっこり笑って、警備員のタマを蹴って逃げた。
戻ったのは、それから25年経って、そのクラブをまるごと買収したときだった。
彼はオーナーになった初日に、昔の警備員を探し出して何の説明もせずに給料を上げた。
オーナーだからってチームは所有物じゃない。
私は、わずかであってもこの美しいサッカーを壊す危険性があるものには参加しない。小さな子どもや大人から取り上げたくないわ。彼らの心の中の美しい情熱を引き出せるものを。
儲かりそうなビジネスに目がくらんだ高齢の男性オーナーたちに、サッカー(フットボール)の魅力の根源・尊さを説くレベッカのスピーチ。今、実際のサッカー界でも、スーパーリーグ構想がうごめいてるだけに、より響くスピーチでした。
名言9 テッド セカンドチャンスへの言葉 ~ep11
第11話、ウエストハムをクビになったネイトをチームに戻そうという流れの中で、ネイトの裏切りを許せず、ネイトの復帰を反対していたコーチのビアードに言ったテッドの言葉。
「どん底のときに起こした行動で、人は評価されるべきじゃない。むしろやり直す機会を得たときに、どれだけ強さを見せるかで判断すべきだ」
シーズン3のサブストーリーといえるネイトの帰還の物語。テッドのこの言葉から、ビアード自身がテッドにまさにこの言葉通りの形で救われた過去を告白してネイトを許す流れ、完璧でした。ひとつの大きな過ちで人を評価しがちですが、テッドのこの包容力、見習いたいです。
名言10 最終回で(まさかの)ヒギンズの名言 ~ep12
最終話で、ついに自らダイヤモンドドッッグズ入りしたロイの悩み「いい人間になりたい。人は変われるか?」に対するヒギンズの言葉。
「人間は完ぺきにはなれない。できるのは助けを求め続けて、いざ、その手が差し伸べられたときは受け入れること。それを忘れなければ、常にいい方向へ前進できる。」
これまで、ずっとおとぼけサブキャラの要素が強かったヒギンズが、最終回でさらっと名言を発する意外性もあって響きました。
「完璧になれるか?」という問いに、「助けを求めて、その手が差し伸べられたときは受け入れること」という回答も、視界をパッと開いてくれるような、見方を変えてくれるすてきな答えだなと思います。
名言11 テッド ロッカールームでのラストスピーチ ~ep12
最終話、優勝の望みがあるシーズン最終節、前半2点のリードを奪われ劣勢のリッチモンド。
さまざまな名スピーチが生まれたロッカールーム。テッドにとって最後のハーフタイムでの言葉も、テッドらしさ満載でした。
「後半については、どうなるかわからん。そうだろ?誰にもな。わかったらスポーツはおもしろくない。君たちの給料だって大きく下がる。
未来は知らなくていい。今、この瞬間を生きたい。
まあ確かに何点かとられている。でも、重要なのは一生懸命、賢く、力を合わせること。
みんなでやろう。“ベストを尽くせた”って穏やかな気持ちで終わろう。」
2点差で負けてる状況のハーフタイムで、2点差を逆転するための戦術の話でもなく、こうすれば逆転できる、でもなく、「どうなるかわからん」と言うのがまさにテッドだし、その通りだなあと。
まとめ
改めて名言で振り返ってみて、「テッド・ラッソ」は、見ると「より善く」生きようと思える、心にかかったもやが晴れるようなドラマだなと思いました。しかも基本はコメディなためか、その言葉の数々が全く説教臭くなく、おいしい水を飲むようにゴクゴクと体に染みわたる作劇も見事ですね。
このドラマを、もっと若いころ、学生のころに見れていたらよかったなあ、もっとよい生き方できていたかもなあと思ってしまう言葉の数々でした。
「テッド・ラッソ」シーズン3、全話感想ブログ書いています。よろしければぜひ。
▼第1話感想はこちら▼
「テッド・ラッソ」はApple TV+で全3シーズン配信中です。
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